JR東日本キハ110系
1. 概要
キハ110系はJR東日本が1990年から製造した一般形気動車である。1999年にかけて、両運転台構造のキハ110形94両、片運転台構造のキハ111・112形の2両編成46本が投入された。
2. 外観の特徴
2.1. 車体構造の差異
製造時期により車体構造に差異が存在する。
◆試作形
1990年に製造された0番台試作車のキハ110-1~3が該当する。0番台は急行列車用で回転リクライニングシートを備えており、座席配置に合わせた横長の側窓が特徴である。また、スカートにはパイプ状の部材が取り付けられている。乗務員室の側窓が金具支持である点は、試作車としての特徴である。
◆初期形
1991年に製造された0番台量産車のキハ110-4・5、キハ111・112-1~3が該当する。0番台としての特徴は試作車と同様である。乗務員室の側窓がHゴム支持である点は、量産車としての特徴である。
◆前期形
1991年から1992年にかけて製造された100番台のキハ110-101~139、キハ111・112-101~121が該当する。100番台は普通列車用で座席配置はセミクロスシートである。100番台以降は貫通幌に片幌方式が採用された点が特徴である。初期に製造されたキハ110-101~104、キハ111・112-101~108は開口部が大きいスカート(以下、初期スカート)を採用している。
◆中期形
1993年に製造された200番台のキハ110-201~210が該当する。側扉を引き戸に変更し、ステップを下げた点が200番台の特徴である。
◆後期形
1993年から1999年にかけて製造された200番台のキハ110-211~245、キハ111・112-201~221が該当する。衝突対策として車体が延長され、外観上は乗務員扉と客扉の間隔が拡大している点が特徴である。キハ110-223~236、キハ111・112-210~212は特急「秋田リレー」用の300番台を編入した車両で、当初は回転リクライニングシートを備えていた。
◆晩期形
1994年に製造された150番台のキハ111・112-151・152が該当する。200番台と同様に引き戸を採用しているが、ステップの高さは100番台に準じている。衝突対策として、延長した車体構造を採用している。
2.2. 改造による変化
◆幌枠改造
落成時の0番台の貫通幌は両幌方式であり、片幌方式を採用した100番台以降との互換性が無かった。2007年に他の番台との併結運用を可能にするため、0番台の全車両の貫通幌が片幌方式に改造された。
※LED式行先表示器
落成時は全車両が幕式行先表示器であったが、2008年から順次、側面行先表示器のみLED式に更新された。
2.3. 塗装の差異
投入線区のオリジナルカラーの採用や特別塗装の施工によって、カラーバリエーションが存在する。
●初期色
1990年に製造された試作車に採用された塗装。薄緑をベースに扉部と車体隅部に緑色を配している。試作車の特徴として前面が黒塗装であった。
●標準色
各地区で共通の標準的な塗装。薄緑をベースに扉部と車体隅部に緑色を配している。一部を除いて、この塗装で落成された。
●秋田色
特急「秋田リレー」に投入された300番台に施された塗装。白をベースにピンク、赤紫色、灰色が配されている。
●陸羽赤色
陸羽東線に投入されたキハ111・112形に施される塗装。白をベースに車体隅部に緑色、側窓下に赤帯を配している。
●陸羽黄色
陸羽西線に投入されたキハ110形に施される塗装。白をベースに車体隅部に緑色、側窓下に黄帯を配している。
●朱色
小海線80周年を記念して、キハ110-121に施された塗装。かつて小海線で使用されたキハ52形の首都圏色を再現したもので、朱色をベースに屋根部が灰色である。
●急行色
小海線80周年を記念して、キハ111・112-111に施された塗装。かつて小海線で使用されたキハ58形の国鉄急行色を再現したもので、クリーム色をベースに窓周りは赤である。
●八高色
八高線全線開通80周年を記念して、キハ111・112-204に施された塗装。かつて八高線で使用されたキハ38形の塗装を再現したもので、白をベースに赤と黒の帯である。
●飯山色
信州デスティネーションキャンペーンの一環として、飯山線のキハ110-231・233に施された塗装。1991年から1997年まで飯山線の車両に施されていた塗装を再現したもので、青と白のツートンである。
●おいこっと赤
飯山線の観光列車「おいこっと」の専用車両であるキハ110-236に施される塗装。臙脂色をベースに扉部がクリーム色である。
●おいこっと白
飯山線の観光列車「おいこっと」の専用車両であるキハ110-235に施される塗装。クリーム色をベースに扉部が臙脂色である。
●東北EM
八戸線を中心に使用されるジョイフルトレイン「TOHOKU EMOTION」に施される塗装。白をベースにタイル調の装飾が施されている。
●ハイレール
小海線の観光列車「HIGH RAIL 1375」に施される塗装。青をベースに側面には夜空と山景の装飾が施されている。
3. 特徴マトリックス図
●陸羽黄色 |
●朱色 |
●急行色 |
●八高色 |
●飯山色 |
●おいこっと赤 |
●おいこっと白 |
●東北EM |
●ハイレール |
試作形 | 初期形 | 前期形 |
中期形
|
後期形
|
晩期形
|
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―
|
幌枠改造
|
―
|
幌枠改造
|
初期スカ
|
―
|
― | ― | ― | |
A01 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
A02 | A03 | B01 | B02 | C01 | C11 | D01 | E01 | F01 | |
― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | E02 | ― | |
― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | E03 | ― | |
― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | E04 | ― | |
― | ― | ― | ― | ― | C21 | ― | ― | ― | |
― | ― | ― | ― | ― | C22 | ― | ― | ― | |
― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | E11 | ― | |
― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | E12 | ― | |
― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | E21 | ― | |
― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | E22 | ― | |
― | ― | ― | B11 | ― | C31 | ― | ― | ― | |
― | ― | ― | ― | ― | C32 | ― | ― | ― |
4. バリエーション一覧
No.
|
現状
|
特徴 |
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A01 | 消滅 | 試作形/●初期色 |
A02 | 消滅 | 試作形/●標準色 |
A03 | 現存 | 試作形/●標準色 [幌枠改造] |
B01 | 消滅 | 初期形/●標準色 |
B02 | 現存 | 初期形/●標準色 [幌枠改造] |
B11 | 現存 | 初期形/●東北EM [幌枠改造] |
C01 | 現存 | 前期形/●標準色 [初期スカ] |
C11 | 現存 | 前期形/●標準色 |
C21 | 消滅 | 前期形/●朱色 |
C22 | 消滅 | 前期形/●急行色 |
C31 | 現存 | 前期形/●東北EM |
C32 | 現存 | 前期形/●ハイレール |
D01 | 現存 | 中期形/●標準色 |
E01 | 現存 | 後期形/●標準色 |
E02 | 消滅 | 後期形/●秋田色 |
E03 | 現存 | 後期形/●陸羽赤色 |
E04 | 現存 | 後期形/●陸羽黄色 |
E11 | 消滅 | 後期形/●八高色 |
E12 | 消滅 | 後期形/●飯山色 |
E21 | 現存 | 後期形/●おいこっと赤 |
E22 | 現存 | 後期形/●おいこっと白 |
F01 | 現存 | 晩期形/●標準色 |
5. 各バリエーション解説
A01 | 試作形/●初期色 |
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キハ110-1~3の落成時の姿。1990年に試作車として落成され、前面部の黒塗装が特徴であった。後に量産車と同様の塗装に変更され、この姿は消滅した。
A02 | 試作形/●標準色 |
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キハ110-1~3の量産化改造後の姿。量産車に準じた塗装に変更された。2007年に貫通幌が両幌式から片幌式に変更され、この姿は消滅した。
A03 | 試作形/●標準色 [幌枠改造] |
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キハ110-1~3の幌枠改造後の姿。100番台以降の車両との併結運用を可能とするため、2007年に幌枠が改造された。現在はこの姿で使用されている。
B01 | 初期形/●標準色 |
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キハ110-4・5、キハ111・112-1~3の落成時の姿。2007年に貫通幌が両幌式から片幌式に変更され、この姿は消滅した。
B02 | 初期形/●標準色 [幌枠改造] |
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キハ110-4・5、キハ111・112-1~3の幌枠改造後の姿。100番台以降の車両との併結運用を可能とするため、2007年に幌枠が改造された。現在はこの姿で使用されている。
B11 | 初期形/●東北EM [幌枠改造] |
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「TOHOKU EMOTION」のキハ111・キクシ112-701の姿。2013年にキハ111・112-2から改造され、内外装が変更されている。現在もこの姿で使用されている。
C01 | 前期形/●標準色 [初期スカ] |
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キハ110-101~104、キハ111・112-101~108の落成時の姿。初期に製造された100番台が該当し、後に製造された車両と比較すると、開口部が大きなスカートが特徴である。現在もこの姿で使用されている。
C21 | 前期形/●朱色 |
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朱色のキハ110-121の姿。同車は2015年に小海線80周年を記念して、塗装が変更された。2016年に標準色に変更されたことで、この姿は消滅している。
C22 | 前期形/●急行色 |
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急行色のキハ111・112-111の姿。同車は2015年に小海線80周年を記念して、塗装が変更された。2017年に標準色に変更されたことで、この姿は消滅している。
C31 | 前期形/●東北EM |
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「TOHOKU EMOTION」のキハ110-701の姿。2013年にキハ110-105から改造され、内外装が変更されている。現在もこの姿で使用されている。
C32 | 前期形/●ハイレール |
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「HIGH RAIL 1375」のキハ112-711の姿。2017年にキハ110-108から改造され、内外装が変更されている。片側の運転台の使用を停止したことで、形式がキハ112形に変更されている。現在もこの姿で使用されている。
E01 | 後期形/●標準色 |
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キハ110-211~222・237~239、キハ111・112-201~209・213~217の落成時の姿。現在もこの姿で使用されている。特急「秋田リレー号」用であった300番台は内外装を変更のうえ、キハ110-223~236、キハ111・112-210~212としてこの姿になった。
E02 | 後期形/●秋田色 |
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キハ110-301~314、キハ111・112-301~303の落成時の姿。特急「秋田リレー号」の専用車両として特急列車用の設備を有していた。同列車は1997年に運行を終了し、同車は一般化改造を経て200番台に編入され、この姿は消滅した。
E03 | 後期形/●陸羽赤色 |
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陸羽東線に投入されたキハ111・112-213~221の姿。専用塗装が施されている。キハ111・112-218~221は落成時からこの塗装であった。現在もこの姿で使用されている。
E04 | 後期形/●陸羽黄色 |
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陸羽西線に投入されたキハ110-237~245の姿。専用塗装が施されている。キハ110-240~245は落成時からこの塗装であった。現在もこの姿で使用されている。
E11 | 後期形/●八高色 |
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八高色のキハ111・112-204の姿。2014年に八高線全線開通80周年を記念して、かつて同線で使用されたキハ38形の塗装が施された。2018年に塗装変更され、この姿は消滅した。
E12 | 後期形/●飯山色 |
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飯山色のキハ110-231・233の姿。2017年に信州デスティネーションキャンペーンの一環として、かつて同線で使用された車両の塗装が施された。2019年に塗装変更され、この姿は消滅した。
E21 | 後期形/●おいこっと赤 |
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「おいこっと」のキハ110-236の姿。2015年に観光列車「おいこっと」の専用車両として改造された。現在もこの姿で使用されている。
E22 | 後期形/●おいこっと白 |
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「おいこっと」のキハ110-235の姿。2015年に観光列車「おいこっと」の専用車両として改造された。現在もこの姿で使用されている。