国鉄415系
1.概要
415系は1971年から製造された近郊形交直流電車である。1960年から製造された交流50Hz対応の401系、403系、交流60Hz対応の421系、423系を基本とし、415系は直流と交流50Hz、交流60Hzに対応する三電源対応車である。
東日本地区の常磐線と九州地区の鹿児島本線などに投入され、民営化後はJR東日本とJR九州が継承した。シートピッチ拡大やステンレス車体の採用など、改良を重ねた増備が長らく続き、JR東日本は民営化後にも一部車両を製造した。また、JR西日本は七尾線電化開業に向けて、113系の改造による415系800番台を製造した。
近年では経年による廃車が進行し、JR東日本は2016年までに全廃した。現在は、JR九州の車両が山陽本線関門トンネルや鹿児島地区を中心に九州全域、JR西日本の車両が七尾線で使用されている。
ここでは、バリエーション豊富な415系の姿を「いろ」、「かたち」の視点から解説する。
2.外観の特徴
2.1.塗装の差異
415系の製造開始時は401系、421系と同様の国鉄色で落成された。1980年代に国鉄色の車両は全車が塗装変更され、常磐線の車両が常磐新塗装、九州地区の車両が九州新塗装に変更された。以降に製造された車両は、製造時点からそれぞれの新塗装で落成されている。
一方、JR西日本が改造により製造した800番台は、一部車両が新福知山色で製造され、七尾色、新七尾色と変遷した。
415系に施された塗装は以下のとおりである。
●国鉄色
製造開始時に施された塗装。近郊形交直流電車の標準色であり、401系や421系と同様である。後述の塗装変更までに製造された車両に採用されていた。後年に製造されたステンレス車には施されたことがない。
常磐線の車両は1985年まで、九州地区の車両は1987年頃までに新塗装に変更された。これにより、一時的にこの塗装は消滅していた。
ところが、2000年にJR九州が南福岡電車区ミフFM5編成の塗装を国鉄色に復元し、同編成が廃車された2012年までこの塗装が復活していた。2001年にはJR東日本も勝田電車区カツK510編成を国鉄色に復元、こちらは2003年に常磐新塗装に変更された。現在はこの塗装を見ることができない。
●常磐新塗装
常磐線で運用されていた車両に施された塗装。1985年のつくば万博開催に合わせ、1983年から1985年にかけて常磐線の全車両で塗装変更された。白基調に青帯を配した塗装である。常磐線のステンレス車はこの塗装であった。
●九州新塗装
九州地区の車両に施される塗装。1986年から九州地区の地域色として導入され、キハ40系など415系以外の車両にも採用されている。415系は全車がこの塗装に変更されている。
白基調に青帯であり、常磐新塗装と類似したものであるが、窓上にも帯が配されているのが特徴である。九州地区のステンレス車はこの塗装で製造されているが、帯色は鋼製車と異なりスカイブルーである。
●新福知山色
福知山線で運用されていた車両に施された塗装。JR西日本が七尾線向けに改造した800番台が落成直後にまとっていた。福知山線での活躍は暫定的であり、七尾線の電化開業にあわせて七尾色に変更された。
●七尾色
七尾線で運用される800番台に施された塗装。800番台は3両編成であり、両先頭車は青色がベース、中間車はピンク色がベースである。2010年以降は単色化に伴って新七尾色に変更され、2012年に消滅した。
●新七尾色
七尾線で運用される800番台に施される塗装。単色化に伴い、2010年から2012年にかけてこの塗装に変更された。現在はJR西日本の415系の全車がこの塗装である。
※この他にも、以下の姿が存在した。しかし、ごく短期間のPR塗装(orラッピング)であるため、ここではバリエーション一覧には含めていない。
●よかトピア号
1989年に開催されたアジア太平洋博覧会のPRのため、1988年から南福岡電車区ミフB118編成に施されていた塗装もしくはラッピング装飾。
●とびうめ国体号
1990年のとびうめ国体のPRとして、南福岡電車区ミフB513編成に施されていた塗装もしくはラッピング装飾。
2.2.車体構造の差異
●初期形
国鉄が1971年に製造した0番台のクハ411-301~-306、モハ414-1~-3、モハ415-1~-3が該当する。側窓が非ユニット窓であり、製造時は大型の前照灯、非冷房であったことが特徴である。晩年は冷房改造、前照灯改造など登場時と異なる姿で使用されたが、非ユニット窓の特徴はそのままであった。
●前期形
国鉄が1974年から製造した、初期形に該当しない0番台が該当する。側窓はユニット窓、前照灯はシールドビーム、製造時よりの冷房搭載が特徴である。ただし、例外として421系の事故廃車の代替として製造されたクハ411-335は、415系で唯一の冷房準備車として落成されている。
●中期形
国鉄が1978年から製造した100番台・200番台、そのロングシート仕様車である500番台・600番台、700番台が該当する。シートピッチの改良に伴い、扉の位置や車端部の窓配置が変更されていることが特徴である。
●後期形
国鉄とJR東日本が1986年から製造した1500番台、1600番台、1700番台が該当する。211系に準じたステンレス車体に変更されたことが特徴である。
●二階建て車
JR東日本が1991年に製造したクハ415-1901が該当する。着席率向上を図る試作車として1両のみが製造された。211系グリーン車に準じた2階建て構造が特徴である。
●800番台
JR西日本が113系の改造により製造した800番台が該当する。側面窓は非ユニット窓であり、前面幌枠の構造も新製車とは異なっている。
全編成がクハ415+モハ414+クモハ415の3両で組成されている。クハ415は先頭車からの改造、クモハ415は中間車の先頭化改造車である。新設されたクモハ415の運転台はクハ415に比べて広く、スカート形状も異なっている。
冷房装置は集中方式のAU75を基本としているが、クモハ415-801、-802のみ分散方式のWAU102である。
2.3.通風器の差異
415系には2タイプの通風器が存在した。以下、それぞれタイプA、タイプBとする。タイプAは初期車から中期車と800番台に採用されており、タイプBは1982年以降に製造された中期車から採用されている。二階建て車のクハ415-1901を除き、製造時は全車に設置されていた。JR西日本とJR九州の車両は腐食防止のため、全車の通風器が撤去された。
3.4.改造による差異
●冷房化改造
非冷房で落成された初期形の車両とクハ411-335はAU75冷房装置により冷房化改造が施された。初期形は1977年まで、クハ411-335も1982年に冷房化が施工された。
●前照灯改造
初期形の先頭車は冷房化後に前照灯のシールドビーム化が施されている。詳細な施工時期は不明である。
●側窓改造
1997年からJR九州の鋼製車両にリニューアル改造が施されている。ロングシート化など内装を中心とした改造だが、初期に改造された車両のみ、一部の側窓が固定窓に交換されている。
3.特徴マトリックス図
通風器 | ||
初期形 | A | |
冷房化 | A | |
冷房化/前照灯 | A | |
前期形 | A | |
冷房準備 | A | |
冷房化 | A | |
撤去 | ||
側窓改造 | 撤去 | |
中期形 | A | |
B | ||
撤去 | ||
側窓改造 | 撤去 | |
後期形 | B | |
撤去 | ||
二階建て車 | なし | |
800番台 | AU75冷房 | A |
WAU102冷房 | A | |
AU75冷房 | 撤去 | |
WAU102冷房 | 撤去 |
4.バリエーション一覧
No.
|
現状
|
特徴 |
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A01 | 消滅 | 初期形/●国鉄色 [通風器A] |
A02 | 消滅 | 初期形/●国鉄色 [通風器A][冷房化] |
A03 | 消滅 | 初期形/●常磐新塗装 [通風器A][冷房化] |
A04 | 消滅 | 初期形/●常磐新塗装 [通風器A][冷房化][前照灯改造] |
B01 | 消滅 | 前期形/●国鉄色 [通風器A] |
B02 | 消滅 | 前期形/●常磐新塗装 [通風器A] |
B03 | 消滅 | 前期形/●九州新塗装 [通風器A] |
B04 | 消滅 | 前期形/●九州新塗装 [通風器撤去][側窓改造] |
B05 | 消滅 | 前期形/●国鉄色 [通風器撤去][側窓改造] |
B06 | 消滅 | 前期形/●九州新塗装 [通風器撤去] |
B11 | 消滅 | 前期形/●国鉄色 [通風器A][冷房準備] |
B12 | 消滅 | 前期形/●国鉄色 [通風器A][冷房化] |
B13 | 消滅 | 前期形/●九州新塗装 [通風器A][冷房化] |
C01 | 消滅 | 中期形/●国鉄色 [通風器A] |
C02 | 消滅 | 中期形/●常磐新塗装 [通風器A] |
C03 | 消滅 | 中期形/●九州新塗装 [通風器A] |
C11 | 消滅 | 中期形/●国鉄色 [通風器B] |
C12 | 消滅 | 中期形/●常磐新塗装 [通風器B] |
C13 | 消滅 | 中期形/●九州新塗装 [通風器B] |
C21 | 現存 | 中期形/●九州新塗装 [通風器撤去][側窓改造] |
C22 | 現存 | 中期形/●九州新塗装 [通風器撤去] |
D01 | 現存 | 後期形/●常磐新塗装 [通風器B] |
D02 | 消滅 | 後期形/●九州新塗装 [通風器B] |
D03 | 現存 | 後期形/●九州新塗装 [通風器撤去] |
D04 | 消滅 | 二階建て車/●常磐新塗装 |
E01 | 消滅 | 800番台/●新福知山色 [通風器A][AU75冷房] |
E02 | 消滅 | 800番台/●新福知山色 [通風器A][WAU102冷房] |
E11 | 消滅 | 800番台/●七尾色 [通風器A][AU75冷房] |
E12 | 消滅 | 800番台/●七尾色 [通風器A][WAU102冷房] |
E13 | 消滅 | 800番台/●七尾色 [通風器撤去][AU75冷房] |
E14 | 消滅 | 800番台/●七尾色 [通風器撤去][WAU102冷房] |
E21 | 現存 | 800番台/●新七尾色 [通風器撤去][AU75冷房] |
E22 | 現存 | 800番台/●新七尾色 [通風器撤去][WAU102冷房] |
5.各バリエーション解説
A01 | 初期形/●国鉄色 [通風器A] |
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初期形の登場時の姿。1971年に製造されたクハ411-301~-306、モハ414-1~-3、モハ415-1~-3が該当する。403系に準じた車体構造であり、大型前照灯や非冷房であったことが特徴である。1977年までに冷房化され、この姿は消滅した。
A02 | 初期形/●国鉄色 [通風器A][冷房化] |
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初期形の冷房化後の姿。AU75冷房装置が搭載された。冷房化にに伴い、先頭車の箱型通風器は撤去され、通風器の位置が変更された。側面行先表示器の準備工事も同時に施された。1983年から1985年にかけて常磐新塗装に変更され、この姿は消滅した。
A03 | 初期形/●常磐新塗装 [通風器A][冷房化] |
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初期形の塗装変更後の姿。つくば万博開催に合わせて、1985年までにこの塗装に変更された。前照灯がシールドビームに変更され、この姿は消滅した。
A04 | 初期形/●常磐新塗装 [通風器A][冷房化][前照灯改造] |
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初期形の前照灯改造後の姿。前照灯改造の施工時期は不明であるが、2000年までにはこの姿になっている。廃車までこの姿で運用されていた。現在は消滅している。
B01 | 前期形/●国鉄色 [通風器A] |
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前期形の登場時の姿。常磐新塗装や九州新塗装に変更され、この姿は消滅している。2001年に勝田電車区カツK510編成に国鉄色が施されたことで、この姿が復活したものの、2003年に常磐新塗装に戻されて再び消滅した。
B02 | 前期形/●常磐新塗装 [通風器A] |
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前期形の塗装変更後の姿。勝田電車区に配置されていた車両は1983年から1985年にこの姿になっている。2007年の常磐線上野口からの撤退に伴い廃車されるまで、この姿で運用されていた。
B03 | 前期形/●九州新塗装 [通風器A] |
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前期形の塗装変更後の姿。JR九州が保有していた車両は1986年頃からこの姿に変更された。1990年代に通風器が撤去され、この姿は消滅した。
B04 | 前期形/●九州新塗装 [通風器撤去][側窓改造] |
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前期形のリニューアル改造後の姿。1997年から施工されているリニューアル改造により、側窓が一部を除いて固定化されている。廃車により2014年までに消滅している。
B05 | 前期形/●国鉄色 [通風器撤去][側窓改造] |
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2000年に国鉄色に復元された南福岡電車区ミフFM5編成の姿。リニューアル改造が施されている車両であったため、登場時の姿とは異なっていた。2015年の廃車までこの姿だった。
B06 | 前期形/●九州新塗装 [通風器撤去] |
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前期形の通風器撤去後の姿。屋根上の通風器は撤去されていいる。、廃車までこの姿で運用されていた。2014年までに消滅している。
B11 | 前期形/●国鉄色 [通風器A][冷房準備] |
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前期形のクハ411-335の登場時の姿。踏切事故で大破した423系クハ421-43の代替として、415系では唯一の冷房準備仕様で製造された。1982年にAU75冷房装置により冷房化され、この姿は消滅した。
B12 | 前期形/●国鉄色 [通風器A][冷房化] |
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前期形のクハ411-335の冷房化後の姿。編成を組む423系と同時に1982年に冷房化された。非冷房車に設置されていた先頭部の箱型通風器が特徴であった。塗装変更により消滅した。
B13 | 前期形/●九州新塗装 [通風器A][冷房化] |
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前期形のクハ411-335の塗装変更後の姿。冷房準備車として落成された同車だが、1982年に冷房化されている。冷房化後も先頭部の箱型通風器はそのままであった。423系とあわせて塗装変更され、この姿になった。この頃にはスカートが423系に準じたものに変更されていた。後に通風器は撤去され、415系前期形との差異は消滅した。423系の全廃により、早期に廃車されている。
C11 | 中期形/●国鉄色 [通風器B] |
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中期形のうち、後期に製造された車両の登場時の姿。通風器はタイプBである。増備途中に新塗装化が開始されたため、登場時から常磐新塗装であった車両も存在した。この姿の車両は少なく、塗装変更までのごく短期間のみ見られた。
C13 | 中期形/●九州新塗装 [通風器B] |
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中期形のうち、後期に製造された車両の塗装変更後の姿。中期形の後期製造車は全車が常磐線に新製投入されたが、民営化前に一部が九州地区へ転出した。転出時は常磐新塗装であったが、後にこの塗装に変更されている。通風器撤去によりこの姿は消滅した。
C21 | 中期形/●九州新塗装 [通風器撤去][側窓改造] |
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中期形のリニューアル改造後の姿。1997年から施工されているリニューアル改造により、側窓が一部を除いて固定化されている。また、通風器も撤去されている。現在もこの姿で運用されている。
D01 | 後期形/●常磐新塗装 [通風器B] |
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勝田電車区に投入された後期形の姿。登場時から廃車まで大きな改造はなく、この姿のままで運用されていた。2016年6月に引退し、廃車が進行している。
E01 | 800番台/●新福知山色 [通風器A][AU75冷房] |
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800番台の登場時の姿。早期落成車は福知山線で暫定的に運用されたため、新福知山色で登場している。
E02 | 800番台/●新福知山色 [通風器A][WAU102冷房] |
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800番台の登場時の姿。新福知山色で登場している。最初に落成された編成は現在の金沢総合車両所サワC01編成であり、分散方式のWAU102冷房搭載車も含まれていた。
E12 | 800番台/●七尾色 [通風器A][WAU102冷房] |
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七尾線の800番台のWAU102冷房搭載車の姿。金沢総合車両所サワC01編成とサワC02編成の七尾方先頭車は分散方式のWAU102冷房装置を搭載している。この姿は通風器撤去により消滅している。
E13 | 800番台/●七尾色 [通風器撤去][AU75冷房] |
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七尾線の800番台の通風器撤去後の姿。2012年までに単色化により消滅している。
E14 | 800番台/●七尾色 [通風器撤去][WAU102冷房] |
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800番台のWAU102冷房搭載車の通風器撤去後の姿。金沢総合車両所サワC01編成とサワC02編成の七尾方先頭車は分散方式のWAU102冷房装置を搭載している。この姿は2012年までに単色化により消滅している。
E21 | 800番台/●新七尾色 [通風器撤去][AU75冷房] |
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800番台の塗装変更後の姿。2010年からの単色化に伴って登場した姿である。2012年に塗装変更を完了し、現在はこの姿で運用されている。
E22 | 800番台/●新七尾色 [通風器撤去][WAU102冷房] |
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WAU102冷房装置を搭載する800番台の塗装変更後の姿。2012年までに塗装変更を完了している。2016年にサワC01編成が廃車され、現在はサワC02編成のみで見られる。