国鉄123系
1.概要
123系は手荷物・郵便輸送の廃止によって余剰となった荷物電車を改造し、国鉄が1986年から製造した近郊形直流電車である。単行運転ができる特性を生かし、ローカル線に投入された。中央本線辰野支線、身延線、阪和線、広島地区、下関地区を中心に活躍してきたが、現在は下関地区のみで運用されている。
2.外観の特徴
2.1.車体構造の差異
●前期形
クモハ123-1のみが該当する。種車はクモニ143形である。側窓はやや狭めの2段窓が9枚並び、戸袋には戸袋窓が設けられている。排障器が設置されている。冷房装置は搭載していない。
●中期形
クモハ123-2、-3、-4が該当する。種車はクモニ143形である。側窓は大型の上部内倒しの窓であり、戸袋窓が設けられている。排障器が設置されている。落成時からAU75冷房装置を搭載している。
●後期形
クモハ123-5、-6が該当する。種車はクモニ143形である。側窓は通勤形にみられるような2連の2段窓が2つ、単独の2段窓が1つ設けてあり、戸袋窓はない。側扉は両開きのものが車体中央と端部に2か所設けられている。前面には貫通扉、床下には排障器が設置されている。落成時からAU75冷房装置を搭載している。
●40番台
クモハ123-41、-42、-43、-44、-45が該当する。種車はクモユニ147形である。側窓は113系などに準じた標準幅の2段窓であり、戸袋窓はない。排障器は設置されていない。落成時は非冷房であった。
●600番台
クモハ123-601、-602が該当する。種車はクモヤ145形である。側窓は標準幅の2段窓であり、戸袋窓が設置されている。側扉は片開き扉が3箇所設けられている。排障器はない。落成時は非冷房であった。
2.2.改造による差異
123系では落成後に以下の改造が施され、外観に変化が生じている
●冷房化改造
非冷房車であった123系は冷房改造が施された。JR東日本が保有したクモハ123-1は1993年7月にAU713冷房装置により冷房化された。JR東海が保有した車両は1988年以降にAU711冷房装置により冷房化され、5040番台に改番された。
●前面貫通扉の設置
JR西日本は連結運転を行うが非貫通であった、クモハ123-2、-3、-4を対象に前面貫通扉を設置した。1993年11月にクモハ123-2に対して施工され、順次施工された。また、JR東海は1990年にクモハ123-5045に対して貫通扉を設置した。改造後はクモハ123-5145に改番されている。
●側扉の移設
JR西日本は2002年にクモハ123-5、-6の側扉の配置を変更した。下関総合車両所への転属にあわせて施工された。
2.3.塗装の差異
●旧ミニエコー色
中央本線辰野支線に投入されたクモハ123-1の落成当時の塗装。白をベースに濃緑の帯である。1990年のワンマン化改造時に同車の塗装変更により消滅した。
●新ミニエコー色
1990年1月以降のクモハ123-1の塗装。ワンマン化と同時に白をベースに赤色の塗装に変更された。引退までこの塗装で使用された。
●身延色
身延線に投入された車両(のちにJR東海が承継する)に施された塗装。白をベースに赤帯の塗装である。民営化後に東海塗装に変更され、消滅した。
●東海色
JR東海の車両に施された塗装。白をベースに湘南色(オレンジと緑)の帯を配した塗装である。103系、119系、キハ40系など多くの車両に施されていた。123系では1989年4月にクモハ123-41に施されたのが最初である。以降、JR東海の保有車はこの塗装に統一されている。引退までこの塗装で使用された。
●広島色(初期)
広島地区に投入された車両に施された塗装。クモハ123-2、-3、-4がこの塗装で落成された。ところが、1987年9月頃に前面窓まわりも青色に塗装され、この塗装は消滅した。登場直後のごく短期間のみ見られた塗装であった。
●広島色
広島地区の車両に施されていた塗装。登場時の●広島色(初期)とは異なり、前面窓まわりは青色で塗装されている。後に下関地区へ転用されたが、2010年の単色化までこの塗装のまま使用されていた。
●阪和色
阪和線羽衣支線に投入されたクモハ123-5、-6に施された塗装。車体色はスカイブルー(青22号)であり、前面窓まわりは黒色で塗装されている。1995年6月、岡山電車区への転属にあわせて車体塗装を変更、この塗装は消滅した。
●宇野色
主に宇野線で運用された岡山電車区の車両(クモハ123-5、-6)に施された塗装。マリンブルーをベースに白いカモメが描かれている。1995年6月の転入にあわせてこの塗装に変更された。2002年に2両とも下関総合車両所に転出し、この塗装は消滅した。
●中国地域色
JR西日本の単色化により、下関総合車両所の車両に施されている塗装。2010年5月にクモハ123-4に初めて施され、2015年8月にクモハ123-6の塗装変更を以って、123系の単色化が完了した。現在は123系の配置が下関に集約されているため、JR西日本が保有する車両はすべてこの塗装に統一されている。
3.特徴マトリックス図
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●旧ミニエコー |
●新ミニエコー |
●広島色(初期) |
●広島色 |
●阪和色 |
●宇野色 |
●中国地域 |
●身延色 |
4.バリエーション一覧
No.
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現状
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特徴 |
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A01 | 消滅 | 前期形/●旧ミニエコー色 |
A02 | 消滅 | 前期形/●新ミニエコー色 |
A03 | 消滅 | 前期形/●新ミニエコー色 [AU713冷房] |
B01 | 消滅 | 中期形/●広島色(初期) |
B02 | 消滅 | 中期形/●広島色 |
B03 | 消滅 | 中期形/●広島色 [貫通扉設置] |
B04 | 現存 | 中期形/●中国地域色 [貫通扉設置] |
C01 | 消滅 | 後期形/●阪和色 |
C02 | 消滅 | 後期形/●宇野色 |
C03 | 消滅 | 後期形/●広島色 [側扉移設] |
C04 | 現存 | 後期形/●中国地域色 [側扉移設] |
D01 | 消滅 | 40番台/●身延色 |
D02 | 消滅 | 40番台/●東海色 |
D03 | 消滅 | 40番台/●東海色 [AU711冷房] |
D04 | 消滅 | 40番台/●東海色 [AU711冷房][貫通扉設置] |
E01 | 消滅 | 600番台/●身延色 |
E02 | 消滅 | 600番台/●身延色 [AU711冷房] |
E03 | 消滅 | 600番台/●東海色 [AU711冷房] |
5.各バリエーション解説
A03 | 前期形/●新ミニエコー色 [AU713冷房] |
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中央本線辰野支線のクモハ123-1の冷房化後の姿。2013年3月の引退までこの姿で活躍した。
B01 | 中期形/●広島色(初期) |
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可部線に投入されたクモハ123-2、-3、-4の登場時の姿。現在の広島色とは違い、窓回りが白塗装絵あった。1987年9月頃に前面窓まわりも青色に塗装され、現在の広島色となり、この姿は消滅した。
B03 | 中期形/●広島色 [貫通扉設置] |
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1993年以降のクモハ123-2、-3、-4の姿。下関に転属し、105系との併結運転を開始したため、1993年に貫通扉を設置した。2010年に単色化が開始され、2015年6月までにこの姿は消滅した。
B04 | 中期形/●中国地域色 [貫通扉設置] |
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単色化後のクモハ123-2、-3、-4の姿。塗装変更は2010年5月にクモハ123-4から開始され、2015年6月にクモハ123-3の塗装変更を以って完了した。以降、0番台(中期形)は全車がこの姿で活躍している。
C03 | 後期形/●広島色 [側扉移設] |
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2002年の下関転属後のクモハ123-5、-6の姿。転属と同時に側扉が移設され、車内レイアウトが変更されている。2015年に単色化され、この姿は消滅した。
D03 | 40番台/●東海色 [AU711冷房] |
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冷房化後のクモハ123-40~-45の姿。冷房化により車番はクモハ123-5041~-5045に変更されている。1990年に貫通扉が設置されたクモハ123-5045を除き、2007年の引退までこの姿で使用された。
D04 | 40番台/●東海色 [AU711冷房][貫通扉設置] |
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1990年に貫通扉が設置されたクモハ123-5045の姿。車番は改造と同時にクモハ123-5145に変更されている。2007年の引退までこの姿で使用された。