国鉄117系

国鉄117系

《最終更新》 2020.09.13

1. 概要

117系は国鉄が1979年から製造した近郊形直流電車である。京阪神地区の新快速で運用されていた153系の置き換えを目的として設計された。並行私鉄への対抗を意識した車体設備であり、2扉の車体に転換クロスシートを備えている。

京阪神地区の新快速のほか、1982年には中京地区にも投入された。京阪神地区の車両はJR西日本に承継されたが、後継となる221系の投入により、1990年代に新快速での運用を縮小した。以後は福知山線、京都地区、岡山地区、下関地区、和歌山地区で使用された。近年は廃車が進行し、現在は京都地区と岡山地区で使用されている。2020年には特急「WEST EXPRESS 銀河」として運行を開始した。

一方、中京地区の車両はJR東海に承継され、東海道本線快速を中心に使用された。後継の313系が登場すると、朝夕の東海道本線の運用が中心となり、2014年までに全車が廃車された。


2. 外観の特徴

2.1. 車体構造の差異

製造時期により差異が存在する。

117系前期形◆前期形
1979年から1982年に製造された0番台が該当する。側窓は2段窓である。0番台から改造された300番台も全車がこの区分に該当する。


117系後期形◆後期形
1986年に製造された100・200番台が該当する。側窓は下降窓である。


2.2. 改造による差異

◆外気導入装置撤去
2015年に岡山電車区の車両の冷房装置が更新され、同時に外気導入装置が撤去された。現在は同区の全編成で完了している。


◆銀河改造
2020年に特急「WEST EXPRESS 銀河」の専用車両として6両編成1本が改造された。簡易寝台や個室座席の設置など、内外装ともに大幅に改造されている。


トレイン117※トレイン117
JR東海は2010年にカキS9編成を観光列車向けの「トレイン117」に改造した。編成中の2号車であるモハ116-45は客扉に柵を設置し、ウィンディスペースとして扉を解放して運行された。外観上の大きな変化はなく、青を基調としたラッピングによる車体装飾が施された。装飾は充当列車に合わせて柔軟に変更されていた。

注)この特徴は以下のバリエーションに反映していない。


2.3. 塗装の差異

117系には以下の塗装が存在した。

117系国鉄色●国鉄色
全車両の落成時の塗装。京阪神地区の新快速の前身である関西急電の国鉄52系と同色である。民営化後に新塗装の登場により徐々に数を減らし、現在はリニア・鉄道館に保存されている大垣車両区カキS1編成のみがこの塗装である。


東海試験色
中京地区の車両に施された塗装。1989年6月に大垣電車区カキS4編成に施された。国鉄色の塗装パターンを踏襲しつつ、ホワイトをベースにオレンジ帯に変更された。後に塗装変更された編成は塗装パターンが変更されたため、カキS4編成のみがこの塗装であった。旧東海色に統一され、この塗装は消滅した。


117系旧東海色旧東海色
中京地区の車両に施された塗装。東海試験色に変更されたカキS4編成に続き、1989年10月にカキS13編成に施された。東海試験色に比べ、窓下の帯が2本に変更されている。JR東海が承継した車両はこの塗装に統一された。後に新東海色に変更され、この塗装は消滅した。


117系新東海色新東海色
中京地区の車両に施された塗装。東海試験色に準じた配色であるが、雨樋の塗装が省略されている。塗装の簡素化を目的として、2000年頃からこの塗装に統一された。廃車により、この塗装は消滅した。


117系福知山色福知山色
福知山線の車両に施された塗装。1989年12月に宮原電車区C2編成に施され、福知山線で使用される編成に普及した。なお、福知山線用の車両はラッシュ対策が施され、300番台に区分されていた。この塗装は300番台の全車に施されていた。117系は2005年頃までに福知山線から撤退したが、京都地区や下関地区に転用された車両がこの塗装を維持していた。京都地区では2009年まで、下関地区では下関総合車両所セキC104編成が転出した2015年まで存在した。


117系サンライナー色サンライナー色
岡山地区の車両に施された塗装。1992年に岡山地区へ転用され、この塗装に変更された。主に快速「サンライナー」に充当され、車体にはロゴが描かれている。2010年から中国地域色へ塗装変更が始まり、2016年7月にオカE04編成が変更され、この塗装は消滅した。


117系和歌山色和歌山色
和歌山地区の車両に施された塗装。2001年に和歌山地区に転用され、この塗装に変更された。2012年から和歌山地域色に変更され、2016年12月にヒネSG004編成が変更され、この塗装は消滅した。


117系京都地域色京都地域色
京都地区の車両に施された塗装。JR西日本は経費削減の一環として、地域ごとの単色塗装を導入し、京都地域の車両は緑色に変更された。2012年1月にキトS6編成から塗装変更が始まり、2018年4月のキトT1編成の塗装変更を以って、この塗装に統一された。


117系和歌山地域色和歌山地域色
和歌山地区の車両に施された塗装。JR西日本は経費削減の一環として、地域ごとの単色塗装を導入し、和歌山地域の車両は青緑色に変更された。最初に変更された編成は2012年4月のヒネSG3編成であり、この編成のみ前面窓枠が車体色であった。以降の編成は前面窓色が黒色に変更されている。


117系和歌山地域色和歌山地域色(黒)
和歌山地区の車両に施された塗装。JR西日本は経費削減の一環として、地域ごとの単色塗装を導入し、和歌山地域の車両は青緑色に変更された。最初に変更された編成は前面窓枠が車体色であったが、2015年3月に塗装変更されたヒネSG2編成以降は黒色になっている。


117系中国地域色中国地域色
岡山地区の車両に施された塗装。JR西日本は経費削減の一環として、地域ごとの単色塗装を導入し、中国地域の車両は黄色に変更された。岡山電車区の編成は前面窓枠が車体色に塗装されていた。塗装変更は2010年から始まり、2016年7月までに塗装変更が完了した。


117系中国地域色中国地域色(黒)
下関地区の車両に施された塗装。JR西日本は経費削減の一環として、地域ごとの単色塗装を導入し、中国地域の車両は黄色に変更された。下関総合車両所の編成は前面窓枠が黒色であった。廃車や転用で下関総合車両所から配置が無くなり、以降は岡山電車区に転出したオカE07編成がこの塗装を維持していた。オカE07編成は2017年8月に窓枠が車体色に変更され、この塗装は消滅した。 


銀河色
2020年に運行を開始した特急「WEST EXPRESS 銀河」の専用車両に施されている塗装。紺色に金帯である。


3. 特徴マトリックス図

 
 

●国鉄色
東海試験色
旧東海色
新東海色
福知山色
京都地域色
和歌山色
和歌山地域色
和歌山地域色(黒)
サンライナー色
中国地域色
中国地域色(黒)
銀河色
前期形
前期形
前期形
後期形
後期形
 
  外気装置撤去 外気装置撤去
銀河改造
  外気装置撤去  
A01 B01
A11 B11
A12 B12
A13 B13
A21
A22 B21  
A31  
A32  
A33
A41 A51  
A42 A52 B51  
A43 B41 B52  
A61  

4. バリエーション一覧

No.
現状
特徴

5. 各バリエーション解説

A01 前期形/●国鉄色

前期形の登場時の姿。新塗装化により数を減らしてきた。近年まで京都総合運転所(現、吹田総合車両所京都支所)配置車はこの塗装が主に採用されていたが、単色化にって2018年4月までに消滅した。一方、大垣車両区カキS1編成はこの姿でリニア・鉄道館に保存されている。

吹田総合車両所京都支所 キトS4編成
吹田総合車両所京都支所 キトS4編成
撮影場所 京都駅   撮影日 2015.03.13
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A11 前期形/東海試験色

大垣電車区のカキS4編成の姿。編成中の3両が前期形であり、この姿であった。民営化後にJR東海はコーポレートカラーにあわせた塗装変更を進め、117系は1989年6月にカキS4編成の塗装が変更された。同編成のみ国鉄色の塗装パターンを維持したまま変更された。後に旧東海色に統一され、この姿は消滅した。

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A12 前期形/旧東海色

中京地区の前期形の姿。民営化後にコーポレートカラーにあわせた塗装変更が行われた。2000年頃に塗り分けを簡素化した新東海色に変更され、この姿は消滅した。

大垣車両区 カキS4編成
大垣車両区 カキS4編成
撮影場所 豊橋駅   撮影日 2003.04.12
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A13 前期形/新東海色

中京地区の前期形の姿。2000年頃に塗装パターンを簡素化したこの塗装に変更された。JR東海の車両は、2009年8月に国鉄色に復元されたカキS11編成を除き、廃車までこの姿であった。

大垣車両区 カキS9編成
大垣車両区 カキS9編成
撮影場所 名古屋駅   撮影日 2007.11.23
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A21 前期形/福知山色

福知山線で使用された前期形の姿。同線からの撤退後は京都地区や下関地区で使用された。京都地区の車両は2009年までに国鉄色に変更、下関地区の車両は2015年の撤退により、この姿は消滅した。

下関総合車両所 セキC104編成
下関総合車両所 セキC104編成
撮影場所 厚狭駅   撮影日 2015.03.29
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A22 前期形/京都地域色

京都地区の前期形の姿。吹田総合車両所京都支所に配置されている車両は2012年からこの塗装に変更された。現在もこの姿で使用されている。

吹田総合車両所京都支所 キトS1編成
吹田総合車両所京都支所 キトS1編成
撮影場所 大津京駅   撮影日 2019.07.20
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A31 前期形/和歌山色

和歌山地区の前期形の姿。2000年に福知山線の車両が転用され、2001年からこの塗装に変更された。単色化により、2016年までにこの姿は消滅した。

吹田総合車両所日根野支所 ヒネSG1編成
吹田総合車両所日根野支所 ヒネSG1編成
撮影場所 和歌山駅   撮影日 2015.03.13
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A32 前期形/和歌山地域色

和歌山地区の前期形の姿。2012年4月から単色化が開始され、最初に変更されたG3編成のみ、前面窓枠が車体色であった。後の編成は黒色であった。2020年に廃車され、この姿は消滅した。

吹田総合車両所日根野支所 ヒネSG3編成
吹田総合車両所日根野支所 ヒネSG3編成
撮影場所 和歌山駅   撮影日 2015.03.13
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A33 前期形/和歌山地域色(黒)

和歌山地区の前期形の姿。吹田総合車両所日根野支所に配置れている車両は2012年から単色化が開始された。単色化として2本目の編成であるヒネSG002編成は2015年に施工され、、同編成以降は前面窓枠が黒色に塗装された。2020年に和歌山地区での運行を終了し、4両編成1本が吹田総合車両所京都支所にて留置されている。

吹田総合車両所日根野支所 ヒネSG5編成
吹田総合車両所日根野支所 ヒネSG5編成
撮影場所 和歌山駅   撮影日 2018.08.26
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A41 前期形/サンライナー色

岡山地区の前期形の姿。1992年に岡山地区に転用され、同時にこの塗装に変更された。2010年から単色化が進行し、2015年に新鮮外気導入装置が撤去され、この姿は消滅した。

岡山電車区 オカE03編成
岡山電車区 オカE03編成
撮影場所 岡山駅   撮影日 2015.08.26
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A42 前期形/中国地域色

岡山地区の前期形の姿。前面窓枠は車体色である。岡山電車区に配置されている車両は2010年からこの塗装に変更された。2015年に新鮮外気導入装置が撤去され、この姿は消滅した。

岡山電車区 オカE02編成
岡山電車区 オカE02編成
撮影場所 岡山駅   撮影日 2015.08.26
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A43 前期形/中国地域色(黒)

下関総合車両所のセキC105編成の姿。前面窓枠は黒色である。同所には前期形(300番台)が4両編成2本が配置されていたが、1本は単色化前に転出した。同編成も転出により、この姿は消滅した。

下関総合車両所 セキC105編成
下関総合車両所 セキC105編成
撮影場所 小野田駅   撮影日 2015.03.29
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A51 前期形/サンライナー色 [外気導入装置撤去]

外気導入装置撤去後の岡山地区の前期形の姿。2015年に冷房装置が更新され、同時に外気導入装置が撤去された。当時、唯一のサンライナー色として残存していたオカE04編成にも施工された。施工時は「mt×SUN LINER」としてラッピングが施されていたため、ラッピングが解除された後の回送列車のみでこの姿が見られた。中国地域色に変更され、この姿は消滅した。

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A52 前期形/中国地域色 [外気導入装置撤去]

外気導入装置撤去後の岡山地区の前期形の姿。2015年に冷房装置が更新され、同時に外気導入装置が撤去された。現在はこの姿で使用されている。

岡山電車区 オカE05編成
岡山電車区 オカE05編成
撮影場所 中庄駅   撮影日 2019.12.07
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A61 前期形/銀河色 [外気導入装置撤去][銀河改造]

特急「WEST EXPRESS 銀河」の姿。2020年に同列車の専用車両として、内外装が大幅に変更された。現在もこの姿で使用されている。

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B01 後期形/●国鉄色

後期形の登場時の姿。JR東海承継車は民営化直後に新塗装に変更されたが、JR西日本承継車は近年の単色化までこの姿を維持していた。現在ではキトT1編成の中間車を残すのみである。一方、大垣車両区カキS1編成はこの姿でリニア・鉄道館に保存されている。

下関総合車両所 セキC102編成
下関総合車両所 セキC102編成
撮影場所 厚狭駅   撮影日 2015.03.29
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B11 後期形/東海試験色

大垣電車区のカキS4編成の姿。編成中の上り方先頭車が後期形であり、この姿であった。民営化後にJR東海はコーポレートカラーにあわせた塗装変更を進め、117系は1989年6月にカキS4編成の塗装が変更された。同編成のみ国鉄色の塗装パターンを維持したまま変更された。後に旧東海色に統一され、この姿は消滅した。

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B12 後期形/旧東海色

中京地区の後期形の姿。民営化後にコーポレートカラーにあわせた塗装変更が行われた。2000年頃に塗り分けを簡素化した新東海色に変更され、この姿は消滅した。

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B13 後期形/新東海色

中京地区の後期形の姿。2000年頃に塗装パターンを簡素化したこの塗装に変更された。JR東海の車両は、2009年8月に国鉄色に復元されたカキS11編成を除き、廃車までこの姿であった。

大垣車両区 カキS8編成
大垣車両区 カキS8編成
撮影場所 岡崎駅   撮影日 2007.11.23
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B21 後期形/京都地域色

京都地区の後期形の姿。吹田総合車両所京都支所に配置されている車両は2012年からこの塗装に変更された。同所には後期形(100番台)が中間車のみ6両が配置されている。前期形に組み込まれて使用されており、うち4両がこの姿である。

吹田総合車両所京都支所 キトS3編成
吹田総合車両所京都支所 キトS3編成
撮影場所 京都駅   撮影日 2015.12.27
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B41 後期形/中国地域色(黒)

下関総合車両所のセキC101編成の姿。前面窓枠は黒色である。同所には後期形(100番台)が4両編成3本が配置されていたが、セキC101編成のみ単色化が施されていた。同編成は岡山電車区に転出し、冷房装置の更新と同時に新鮮外気導入装置が撤去され、この姿は消滅した。

下関総合車両所 セキC101編成
下関総合車両所 セキC101編成
撮影場所 厚狭駅   撮影日 2015.03.29
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B51 後期形/中国地域色 [外気導入装置撤去]

外気導入装置撤去後の岡山地区の後期形の姿。前面窓枠は車体色である。2015年に下関総合車両所から転入し、単色化と外気導入装置が撤去された。現在もこの姿で使用されている。

岡山電車区 オカE08編成
岡山電車区 オカE08編成
撮影場所 中庄駅   撮影日 2019.12.07
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B52 後期形/中国地域色(黒) [外気導入装置撤去]

外気導入装置撤去後の岡山電車区オカE07編成の姿。前面窓枠は黒色である。2015年に下関総合車両所から転入し、冷房装置の更新と同時に外気導入装置が撤去された。2017年8月に前面窓枠が車体色に変更され、この姿は消滅した。

岡山電車区 オカE07編成
岡山電車区 オカE07編成
撮影場所 岡山駅   撮影日 2016.08.19
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