国鉄117系
1. 概要
117系は国鉄が1979年から製造した近郊形直流電車である。京阪神地区の新快速で運用されていた153系の置き換えを目的として設計された。並行私鉄への対抗を意識した車体設備であり、2扉の車体に転換クロスシートを備えている。
京阪神地区の新快速のほか、1982年には中京地区にも投入された。京阪神地区の車両はJR西日本に承継されたが、後継となる221系の投入により、1990年代に新快速での運用を縮小した。以後は福知山線、京都地区、岡山地区、下関地区、和歌山地区で使用された。近年は廃車が進行し、現在は京都地区と岡山地区で使用されている。2020年には特急「WEST EXPRESS 銀河」として運行を開始した。
一方、中京地区の車両はJR東海に承継され、東海道本線快速を中心に使用された。後継の313系が登場すると、朝夕の東海道本線の運用が中心となり、2014年までに全車が廃車された。
2. 外観の特徴
2.1. 車体構造の差異
製造時期により差異が存在する。
◆前期形
1979年から1982年に製造された0番台が該当する。側窓は2段窓である。0番台から改造された300番台も全車がこの区分に該当する。
◆後期形
1986年に製造された100・200番台が該当する。側窓は下降窓である。
2.2. 改造による差異
◆外気導入装置撤去
2015年に岡山電車区の車両の冷房装置が更新され、同時に外気導入装置が撤去された。現在は同区の全編成で完了している。
◆銀河改造
2020年に特急「WEST EXPRESS 銀河」の専用車両として6両編成1本が改造された。簡易寝台や個室座席の設置など、内外装ともに大幅に改造されている。
※トレイン117
JR東海は2010年にカキS9編成を観光列車向けの「トレイン117」に改造した。編成中の2号車であるモハ116-45は客扉に柵を設置し、ウィンディスペースとして扉を解放して運行された。外観上の大きな変化はなく、青を基調としたラッピングによる車体装飾が施された。装飾は充当列車に合わせて柔軟に変更されていた。
注)この特徴は以下のバリエーションに反映していない。
2.3. 塗装の差異
117系には以下の塗装が存在した。
●国鉄色
全車両の落成時の塗装。京阪神地区の新快速の前身である関西急電の国鉄52系と同色である。民営化後に新塗装の登場により徐々に数を減らし、現在はリニア・鉄道館に保存されている大垣車両区カキS1編成のみがこの塗装である。
●東海試験色
中京地区の車両に施された塗装。1989年6月に大垣電車区カキS4編成に施された。国鉄色の塗装パターンを踏襲しつつ、ホワイトをベースにオレンジ帯に変更された。後に塗装変更された編成は塗装パターンが変更されたため、カキS4編成のみがこの塗装であった。旧東海色に統一され、この塗装は消滅した。
●旧東海色
中京地区の車両に施された塗装。東海試験色に変更されたカキS4編成に続き、1989年10月にカキS13編成に施された。東海試験色に比べ、窓下の帯が2本に変更されている。JR東海が承継した車両はこの塗装に統一された。後に新東海色に変更され、この塗装は消滅した。
●新東海色
中京地区の車両に施された塗装。東海試験色に準じた配色であるが、雨樋の塗装が省略されている。塗装の簡素化を目的として、2000年頃からこの塗装に統一された。廃車により、この塗装は消滅した。
●福知山色
福知山線の車両に施された塗装。1989年12月に宮原電車区C2編成に施され、福知山線で使用される編成に普及した。なお、福知山線用の車両はラッシュ対策が施され、300番台に区分されていた。この塗装は300番台の全車に施されていた。117系は2005年頃までに福知山線から撤退したが、京都地区や下関地区に転用された車両がこの塗装を維持していた。京都地区では2009年まで、下関地区では下関総合車両所セキC104編成が転出した2015年まで存在した。
●サンライナー色
岡山地区の車両に施された塗装。1992年に岡山地区へ転用され、この塗装に変更された。主に快速「サンライナー」に充当され、車体にはロゴが描かれている。2010年から中国地域色へ塗装変更が始まり、2016年7月にオカE04編成が変更され、この塗装は消滅した。
●和歌山色
和歌山地区の車両に施された塗装。2001年に和歌山地区に転用され、この塗装に変更された。2012年から和歌山地域色に変更され、2016年12月にヒネSG004編成が変更され、この塗装は消滅した。
●京都地域色
京都地区の車両に施された塗装。JR西日本は経費削減の一環として、地域ごとの単色塗装を導入し、京都地域の車両は緑色に変更された。2012年1月にキトS6編成から塗装変更が始まり、2018年4月のキトT1編成の塗装変更を以って、この塗装に統一された。
●和歌山地域色
和歌山地区の車両に施された塗装。JR西日本は経費削減の一環として、地域ごとの単色塗装を導入し、和歌山地域の車両は青緑色に変更された。最初に変更された編成は2012年4月のヒネSG3編成であり、この編成のみ前面窓枠が車体色であった。以降の編成は前面窓色が黒色に変更されている。
●和歌山地域色(黒)
和歌山地区の車両に施された塗装。JR西日本は経費削減の一環として、地域ごとの単色塗装を導入し、和歌山地域の車両は青緑色に変更された。最初に変更された編成は前面窓枠が車体色であったが、2015年3月に塗装変更されたヒネSG2編成以降は黒色になっている。
●中国地域色
岡山地区の車両に施された塗装。JR西日本は経費削減の一環として、地域ごとの単色塗装を導入し、中国地域の車両は黄色に変更された。岡山電車区の編成は前面窓枠が車体色に塗装されていた。塗装変更は2010年から始まり、2016年7月までに塗装変更が完了した。
●中国地域色(黒)
下関地区の車両に施された塗装。JR西日本は経費削減の一環として、地域ごとの単色塗装を導入し、中国地域の車両は黄色に変更された。下関総合車両所の編成は前面窓枠が黒色であった。廃車や転用で下関総合車両所から配置が無くなり、以降は岡山電車区に転出したオカE07編成がこの塗装を維持していた。オカE07編成は2017年8月に窓枠が車体色に変更され、この塗装は消滅した。
●銀河色
2020年に運行を開始した特急「WEST EXPRESS 銀河」の専用車両に施されている塗装。紺色に金帯である。
3. 特徴マトリックス図
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●国鉄色 |
●福知山色 |
●京都地域色 |
●和歌山色 |
●和歌山地域色 |
●和歌山地域色(黒) |
●サンライナー色 |
●中国地域色 |
●中国地域色(黒) |
●銀河色 |
4. バリエーション一覧
No.
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現状
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特徴 |
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A01 | 現存 | 前期形/●国鉄色 |
A11 | 消滅 | 前期形/●東海試験色 |
A12 | 消滅 | 前期形/●旧東海色 |
A13 | 消滅 | 前期形/●新東海色 |
A21 | 消滅 | 前期形/●福知山色 |
A22 | 現存 | 前期形/●京都地域色 |
A31 | 消滅 | 前期形/●和歌山色 |
A32 | 消滅 | 前期形/●和歌山地域色 |
A33 | 現存 | 前期形/●和歌山地域色(黒) |
A41 | 消滅 | 前期形/●サンライナー色 |
A42 | 消滅 | 前期形/●中国地域色 |
A43 | 消滅 | 前期形/●中国地域色(黒) |
A51 | 消滅 | 前期形/●サンライナー色 [外気導入装置撤去] |
A52 | 現存 | 前期形/●中国地域色 [外気導入装置撤去] |
A61 | 現存 | 前期形/●銀河色 [外気導入装置撤去][銀河改造] |
B01 | 消滅 | 後期形/●国鉄色 |
B11 | 消滅 | 後期形/●東海試験色 |
B12 | 消滅 | 後期形/●旧東海色 |
B13 | 消滅 | 後期形/●新東海色 |
B21 | 現存 | 後期形/●京都地域色 |
B41 | 消滅 | 後期形/●中国地域色(黒) |
B51 | 現存 | 後期形/●中国地域色 [外気導入装置撤去] |
B52 | 消滅 | 後期形/●中国地域色(黒) [外気導入装置撤去] |
5. 各バリエーション解説
A01 | 前期形/●国鉄色 |
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前期形の登場時の姿。新塗装化により数を減らしてきた。近年まで京都総合運転所(現、吹田総合車両所京都支所)配置車はこの塗装が主に採用されていたが、単色化にって2018年4月までに消滅した。一方、大垣車両区カキS1編成はこの姿でリニア・鉄道館に保存されている。
A11 | 前期形/●東海試験色 |
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大垣電車区のカキS4編成の姿。編成中の3両が前期形であり、この姿であった。民営化後にJR東海はコーポレートカラーにあわせた塗装変更を進め、117系は1989年6月にカキS4編成の塗装が変更された。同編成のみ国鉄色の塗装パターンを維持したまま変更された。後に旧東海色に統一され、この姿は消滅した。
A12 | 前期形/●旧東海色 |
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中京地区の前期形の姿。民営化後にコーポレートカラーにあわせた塗装変更が行われた。2000年頃に塗り分けを簡素化した新東海色に変更され、この姿は消滅した。
A13 | 前期形/●新東海色 |
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中京地区の前期形の姿。2000年頃に塗装パターンを簡素化したこの塗装に変更された。JR東海の車両は、2009年8月に国鉄色に復元されたカキS11編成を除き、廃車までこの姿であった。
A21 | 前期形/●福知山色 |
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福知山線で使用された前期形の姿。同線からの撤退後は京都地区や下関地区で使用された。京都地区の車両は2009年までに国鉄色に変更、下関地区の車両は2015年の撤退により、この姿は消滅した。
A22 | 前期形/●京都地域色 |
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京都地区の前期形の姿。吹田総合車両所京都支所に配置されている車両は2012年からこの塗装に変更された。現在もこの姿で使用されている。
A31 | 前期形/●和歌山色 |
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和歌山地区の前期形の姿。2000年に福知山線の車両が転用され、2001年からこの塗装に変更された。単色化により、2016年までにこの姿は消滅した。
A32 | 前期形/●和歌山地域色 |
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和歌山地区の前期形の姿。2012年4月から単色化が開始され、最初に変更されたG3編成のみ、前面窓枠が車体色であった。後の編成は黒色であった。2020年に廃車され、この姿は消滅した。
A33 | 前期形/●和歌山地域色(黒) |
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和歌山地区の前期形の姿。吹田総合車両所日根野支所に配置れている車両は2012年から単色化が開始された。単色化として2本目の編成であるヒネSG002編成は2015年に施工され、、同編成以降は前面窓枠が黒色に塗装された。2020年に和歌山地区での運行を終了し、4両編成1本が吹田総合車両所京都支所にて留置されている。
A41 | 前期形/●サンライナー色 |
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岡山地区の前期形の姿。1992年に岡山地区に転用され、同時にこの塗装に変更された。2010年から単色化が進行し、2015年に新鮮外気導入装置が撤去され、この姿は消滅した。
A42 | 前期形/●中国地域色 |
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岡山地区の前期形の姿。前面窓枠は車体色である。岡山電車区に配置されている車両は2010年からこの塗装に変更された。2015年に新鮮外気導入装置が撤去され、この姿は消滅した。
A43 | 前期形/●中国地域色(黒) |
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下関総合車両所のセキC105編成の姿。前面窓枠は黒色である。同所には前期形(300番台)が4両編成2本が配置されていたが、1本は単色化前に転出した。同編成も転出により、この姿は消滅した。
A51 | 前期形/●サンライナー色 [外気導入装置撤去] |
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外気導入装置撤去後の岡山地区の前期形の姿。2015年に冷房装置が更新され、同時に外気導入装置が撤去された。当時、唯一のサンライナー色として残存していたオカE04編成にも施工された。施工時は「mt×SUN LINER」としてラッピングが施されていたため、ラッピングが解除された後の回送列車のみでこの姿が見られた。中国地域色に変更され、この姿は消滅した。
A52 | 前期形/●中国地域色 [外気導入装置撤去] |
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外気導入装置撤去後の岡山地区の前期形の姿。2015年に冷房装置が更新され、同時に外気導入装置が撤去された。現在はこの姿で使用されている。
B01 | 後期形/●国鉄色 |
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後期形の登場時の姿。JR東海承継車は民営化直後に新塗装に変更されたが、JR西日本承継車は近年の単色化までこの姿を維持していた。現在ではキトT1編成の中間車を残すのみである。一方、大垣車両区カキS1編成はこの姿でリニア・鉄道館に保存されている。
B11 | 後期形/●東海試験色 |
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大垣電車区のカキS4編成の姿。編成中の上り方先頭車が後期形であり、この姿であった。民営化後にJR東海はコーポレートカラーにあわせた塗装変更を進め、117系は1989年6月にカキS4編成の塗装が変更された。同編成のみ国鉄色の塗装パターンを維持したまま変更された。後に旧東海色に統一され、この姿は消滅した。
B13 | 後期形/●新東海色 |
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中京地区の後期形の姿。2000年頃に塗装パターンを簡素化したこの塗装に変更された。JR東海の車両は、2009年8月に国鉄色に復元されたカキS11編成を除き、廃車までこの姿であった。
B21 | 後期形/●京都地域色 |
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京都地区の後期形の姿。吹田総合車両所京都支所に配置されている車両は2012年からこの塗装に変更された。同所には後期形(100番台)が中間車のみ6両が配置されている。前期形に組み込まれて使用されており、うち4両がこの姿である。
B41 | 後期形/●中国地域色(黒) |
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下関総合車両所のセキC101編成の姿。前面窓枠は黒色である。同所には後期形(100番台)が4両編成3本が配置されていたが、セキC101編成のみ単色化が施されていた。同編成は岡山電車区に転出し、冷房装置の更新と同時に新鮮外気導入装置が撤去され、この姿は消滅した。
B51 | 後期形/●中国地域色 [外気導入装置撤去] |
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外気導入装置撤去後の岡山地区の後期形の姿。前面窓枠は車体色である。2015年に下関総合車両所から転入し、単色化と外気導入装置が撤去された。現在もこの姿で使用されている。
B52 | 後期形/●中国地域色(黒) [外気導入装置撤去] |
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外気導入装置撤去後の岡山電車区オカE07編成の姿。前面窓枠は黒色である。2015年に下関総合車両所から転入し、冷房装置の更新と同時に外気導入装置が撤去された。2017年8月に前面窓枠が車体色に変更され、この姿は消滅した。